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「私の中に何かがいる -テレパシー少女「蘭」事件ノート-」 あさのあつこ

テレパシー少女「蘭」の周辺には次々と不思議な出来事が起こり、それを友達や家族や彼氏の協力を得て解決していくという、ある意味王道的なサイキックアクションもの。

うーんと、悪くもないがものすごくよくもない。なんとなく、何かがすごく引っかかる話なんだけど、どこの部分がどう気に入らないのか上手く説明することができない。

割と純粋に子供むけに書かれた本なので、子供の頃に読んでいたらもう少し違った受け止め方をしていたかもしれない。
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by agco | 2005-07-30 17:32 | 児童文学・絵本・YA

「故郷から10000光年」 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

思い出したように再びティプトリー。
この本は多分、以前に読んだことがない。あるいはきれいさっぱり忘れてしまっているかのどちらかだ。15短篇が収録されているのだが、そのうちひとつも記憶になかった。
しかし……。

わたしの頭が悪いのか、作者の書き方と合わないのか、ティプトリーは時々話の意味がつかめないことがある。これは科学的な内容の難しさではなく、「え。それで?」というタイプのわからなさだ。書いてある文章事態は理解できるが、作者がそれで何を書こうとしたのかがわからない。そこから何を読み取ればいいのか途方にくれてしまう。ある意味不親切な作風だ。

わかるときも当然ある。そういう場合は素直に物語に入っていけるし、面白い。

わかるけれども、面倒になって飛ばしてしまう話もある。ギャグ調というか、スラップスティックというか、会話主体で展開される騒々しい短篇がそれだ。好きな人はいるだろうけど、わたしは苦手だ。

そういうわけで、ティプトリーの話というのは、面白いと分からないと鬱陶しいがきれいに三分割だ。なんという微妙な作家だろう。わたしはティプトリーが好きなのか嫌いなのか、自分でもいまひとつ判断ができないでいるのだ。
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by agco | 2005-07-26 23:53 | SF

「停電の夜に」 ジュンパ・ラヒリ

デビュー後まもなくO. ヘンリー賞、ヘミングウェイ賞、ピュリツァー賞などを総なめにした、インド系の新人作家の短編集。
ピュリツァー賞の位置づけがわたしにはよくわからないのですが、O. ヘンリー賞の方はものすごく納得のいく感じがします。こまごまとした普通の人々の日常の中から、さりげないと見えて実は意味深いできごとを切り出して来るその手法。そっと人の心理に寄り添い、小さな爪で、かすかな傷をつけていく。流血するほどではないが、薄赤く残り、いつまでもひりひりと痛む。

表題作「停電の夜に」は、最初の子供を死産でなくした若い夫婦の話です。
その出来事があってから、互いの歯車がうまく合わなくなっていたふたりは、停電の夜が何日かつづいたのをきっかけに、暗闇の中で蝋燭をともし、電灯の下では言えなかった小さな秘密を互いに打ちあけ合うようになります。
暗い中でのそうしたふれあいは、彼らにつかのまの親しい空気を呼び戻すようにも思えますが、彼らがその内部に隠し持っていた一番の秘密はもっと重いものであり、もはや修復のできないものでした。

もっとも痛いばかりではなく、じわりと染み入るやさしい話もあるんですよ。
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by agco | 2005-07-25 23:54 | その他創作

「国境」 黒川博行

「疫病神」コンビが帰ってきた!

今度の二人のトラブルは、北朝鮮遠征を二度も含んだ壮大かつ壮絶な命がけの戦いだった。
詐欺師に金を騙し取られた兄貴分の片をつけるために動いている桑原と、同じ詐欺師に中古の重機を斡旋したばっかりに、損失を出した業者から追い込みをかけられている二宮。
詐欺師の片割れを追って北朝鮮に潜入を図り、ともに死にそうな目にあいながらも生き延び帰国。しかしそれはあくまで問題解決の序盤にすぎず、主犯の男を追い詰め、さらにその金主までも締め上げて、億単位の金を手に入れようと奮闘するが、世の中そんなに上手くは行かない。
すべてが思い通りに運んだとはとてもいえなくても、それでも物語は最後には一応の平和的解決を見る。

本書の特徴は、主人公の二人がとにかくよく動くこと。小さな情報から次の行動を選択し、足と口とたまには暴力も使って次の展開へと強引に進んでいく。
馬力が違う。
極道でとにかく強気な桑原ばかりではなく、一応は一般人で気弱なところのある二宮さえもが、いざというときの腹の据わり方は只者ではない。
互いに罵りあいながら、掛け合い漫才のような会話を日常的に繰り返しながら、いきがかり上は相棒である二人の間にも金をめぐって妥協のないしのぎあいがあって微笑ましい。
北朝鮮潜入のシーンでは、その描写力にも舌を巻く。よく調べたなあ。

パワフルで緻密で、とても勉強になり、にこりと笑みがこぼれる物語だ。
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by agco | 2005-07-23 23:00 | ミステリ

「戦士志願」 ロイス・マクマスター・ビジョルド

生まれながら身体にハンデを負った貴族の息子のマイルズは、士官学校の入学試験に失敗し、気分転換をかねて母の故郷の惑星を訪れた。
しかしマイルズというのは大人しく落ち込んでいるような性格ではなく、頼まれてもいない揉め事に首を突っ込みまくり、廃棄寸前の貨物船を乗務員ごとむりやり買収し、脱走兵をエンジニアとして口説き、従者の軍曹とその娘を引き連れて、戦争真っ最中の立ち入り禁止星域へとヤバイ荷物を載せて飛び立った。
物語は怒涛のごとくに展開する。敵方の傭兵隊に捕獲されたかと思えば一転これを逆襲して宇宙船ごと奪い、乗務員までとっさにでっち上げた傭兵部隊に編入し、あれよあれよといううちに戦争に巻き込まれて劣勢方の救世主のような存在となって部隊を率いて戦うはめになる。
誤解が誤解をよんで、若返り処置を受けた歴戦の提督のように周囲に受け止められているマイルズは、内心悲鳴を上げつつも、機転と周囲の助力によって、なんときっちりと与えられた役割を果たしてしまう。
そうこうするうち、長らく離れていた故郷では、マイルズを皇帝に対する反逆罪で死刑にせよとする謀略などが進行し、次から次へとマイルズは休む暇もない。
悲しい出来事も多く起こる物語であるが、マイルズの不屈の精神とその鮮やかな手腕には、うきうきどきどきさせられる。おまえそれは無茶だろうということが、びしっと決まる清々しさ。
これが長く続くシリーズとなっていることが納得できる、楽しい読み物でした。
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by agco | 2005-07-22 22:31 | SF

「テロリストのパラソル」 藤原伊織

アル中で冴えない中年男のバーテンダーである菊池は、その昔の安保の時代、爆弾テロの犯人として追われた過去があった。
二十年以上に渡って身を潜め、正体を隠して生きてきた彼の生活は、ある日の新宿中央公園で起こった爆弾騒ぎで一変する。彼は偶然その場に居合わせただけだったのだが、まるで犯人ででもあるかのように実名報道され、警察にも、正体の知れないやくざ者にも追われることになった。
爆弾テロの大勢の被害者の中には、彼が昔親しくしていた女の名があり、犯人の狙いが一体どこにあったのか、それが不透明だった。
菊池は死んだ女の娘・塔子や、やくざの浅井らの協力を得て、次第に事件の真相へと近づいていく。

過去からは逃れられない。
菊池の昔の爆弾テロの容疑は冤罪というか正確には事故であってテロですらなかったが、それをあえて言い立てなかったのは彼のかつての親友に対する義理というか友情のためだ。あるいは菊池という人物のそもそもの性格のためだ。
何事に対しても割とあっさりとしていて、ひょうひょうと自分らしさを維持している菊池という人間に、周囲は憧れたりひそかな嫉妬を感じたりする。
それが二十数年もの時を経て、思いがけない大量殺人として結実したことは、菊池には責任の持てない不幸な事実だったろう。
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by agco | 2005-07-19 22:57 | ミステリ

「エレンディラ」 G.ガルシア=マルケス

本当は次には「族長の秋」を読みたかったのだが、なんと絶版していて(?)新刊書としては手に入らない。があん。
そういうわけで、手に入れやすかった「エレンディラ」です。薄い本で、短編集で、読みやすいといえば読みやすい。「百年の孤独」の中にも出てきたエピソードと軽くかぶっている部分があるのは、もはやそれらは作者にとって、物語ることの根底にある発想の基盤なのだろう。
ふしぎな出来事がふしぎでなく起こり、決して人々の生々しい現実から離れてはいないのにどこか神話的な物語の数々がそこにある。
南米という土地柄なのか、人々の血は熱い。憎むのも愛するのも激しく強い。
それぞれに小粒ながらも、ギラギラと荒々しく、また洗練された輝きをもつ、色とりどりの美しい宝石のような物語集でした。
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by agco | 2005-07-19 00:24 | その他創作

「上陸」 五條瑛

もう一冊つづけて五條瑛。

「金がない」こと以外は特に共通項のない、中年男の金満、若いが前科のある安二、不法滞在パキスタン人のアキムの三人は、まさに金がないことが理由で同居しながら建設現場を渡り歩いている。特別に気が合うというわけでもないが、意外に深刻な揉め事はなく、気がつくとまるで家族のような関係が生まれている。

その彼らは1999年に手を組んでひとつの犯罪を犯した。金のためにしたことで、罪悪感があったというのでもないが、彼らはそろって口をつぐみ、そのことを話さなくなった。その後も彼らの同居はつづき、様々なトラブルに巻き込まれながらもなんとか日々をしのいできたが、あるとき、過去の犯罪に関したひとつの出来事が、彼らの関係を突き崩した。

読みやすく、人の心の機微に通じた作者らしい短編集。過去の犯罪が少し弱い気もするが…でもまあ、よくまとまった話ではある。
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by agco | 2005-07-18 21:23

「恋刃」 五條瑛

革命シリーズ第四弾の本書。
前回の展開や登場人物を大分忘れかけているので、相当部分を想像力で補いつつ読みました。(……)
前回までは一応一冊で1つの区切りがあった感じでしたが、今回はものすごく途中な感じでしたね。悪い内容ではないのですが、先を早く読ませてくれないと、また誰が誰だったかを忘れてしまう。うわあん。
タイトルに偽りなく、様々な人々が予想もしない場所で陥った恋の刃にずたずたにされる物語です。

しかし亮司のサーシャに対するあの態度はどうなの…。そしてその亮司を詩神(ミューズ)とかって過大な夢を抱いちゃってる彫翔さんも正気に返って欲しい(笑)
サーシャ本人については、もう、好きにやってくださいというより他はありません。あの人はわたしの頭の中では完全にお笑いキャラ扱いですよ。どんなすごい行動を取られても「だってサーシャだもん」の一言で片がつくというか。……のび太並? cf 「のび太のくせに!」
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by agco | 2005-07-17 20:57 | ミステリ

「透明な旅路と」 あさのあつこ

妻と離婚し、上司の横領のとばっちりをうけて失職し、ほとんど理由もなくラブホテルで街娼を絞め殺してしまった男、吉行。
車に乗って逃亡し、何のあてもなく実家のある山中へと分け入った彼は、行き止まりの旧道で不思議なふたりの子供と出会う。白兎(ハクト)と名乗る少年と、和子という名の幼女の二人連れは、夜の山道に突然立っているのはあまりに不自然な組み合わせだ。しかも吉行は白兎の顔にどことなく見覚えがあり、また和子の名前におぼろげな記憶がうずいた。しかし彼はその正体を思い出せずに、とりあえずふたりを車に拾うことになる。

この話、白兎が名乗ったあたりのシーンで、すでにかなり先の予想がつくというか、からくりがうっすら見えちゃうので、それをどういう風にまとめるかに真価が問われるタイプの物語です。
ええと、それで、わたしの個人的な評価は申し訳ないけどそう高くはない。普通くらい。大きく外してはいないけど、感動するほどではない。
普段は児童文学の書き手である作者は、本作を大人向けに書こうとして、いらないところに力が入ってしまったのではないかという気もする。
やたらと下半身の描写だの殺人の描写だのが多いのは、露悪的にすることが大人の証明だとでも思っているのだろうか? だとしたらそれは少々勘違いだ。別にそんな描写はなくても大人にむけた物語は作れる。
そのあたり、熟考し、次の物語に挑んでいただきたい。
というか、普段子供むけに書いているものの方が、よほど大人むけの内容であるような気がするのだが。
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by agco | 2005-07-16 23:52 | その他創作



あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
by agco

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