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「反逆の星」 オースン・スコット・カード

流刑惑星トリーズンに、80人の反逆者たちが流された。それから三千年がたち、反逆者たちはそれぞれの技術や能力をもとに性質の異なる国家を築き上げていた。
遺伝学者の先祖を持ち、驚異的な人体再生能力を身につけたミューラー人の第一王子ラニックは、過剰再生症を発症し、一見女性化した体を持って国を追われる。彼は追放の身でありながら、同時に敵国ンクマイの秘密を探るという密命をおびていた。この使命を成功させれば、父王はラニックをミューラーへと再び受け入れてくれるかもしれない。そうした希望を持ってンクマイへと潜入を果たしたラニックだったが、その正体を知られ、命からがらンクマイをも逃げ出すことになる。そこから世界各国を遍歴する彼の旅がはじまったのだ。

80人の反逆者たちの職業や能力によって、それぞれに独自の特色を持つに至った子孫の人々の書かれ方が面白い。ンクマイは物理学者の子孫で、恒星間航行の新理論を築き上げ、地質学者の子孫たちは岩や地面と語らい、物質の構成を変化させる方法を身につけ、哲学者の子孫は思念で自らの属する時間の流れを自在に操る技を身につける。
最終的にラニックの最大の敵となる一族は、祖先に政治家を持ち、それゆえに相手を幻惑する技を持つ。
そうした様々な一族の住む土地を巡り歩くうちにラニックは成長し、ついには彼の望みを叶えるだけの力を持つようになる。このラニックという王子はなかなかバイタリティにあふれた性格で、辛い目にあっていても簡単にはへこたれないし、ちゃんと自分の望みを知っている。重い罪を引き受けてでも、彼が正しいと信じることを成し遂げるだけの気概がある。
だからこの物語は決して暗い方向へはむかわない。

SFとファンタジーの中間にあるような話だが、この感じはアン・マキャフリイの「パーンの竜騎士」シリーズや、ル=グィンの「闇の左手」なんかとも通じるところがあるなあと思う次第。いや、どちらも好きなんです。

本書は初出時にはずいぶん不評だったのだそうだが、わたしは楽しく読ませてもらった。教えていただいて良かった。ありがとうございます。

反逆の星」 オースン・スコット・カード
by agco | 2004-10-27 01:31 | SF
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あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
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