「ティンブクトゥ」 ポール・オースター

本書の主人公は犬である。おいぼれで、決して美しくもないが、知恵がまわり、主人に忠実な犬である。名前はミスター・ボーンズだ。
彼の主人ウィリーは相当にだめな男で、ほとんど浮浪者のようなありさまで死んだ。その死の直前、男はミスター・ボーンズに新たな主人のもとへ行けと(その時点では、男の高校時代の恩師が最有力候補だった)遺言するが、ミスター・ボーンズは結局その人物に会うことはできず、様々な人の世話になりながら、町をさすらうことになる。
最終的に落ち着いたとある家庭で、ミスター・ボーンズはそこそこに安定した生活を得るが、しかし完全には満たされていない。

本書を非常に印象的なものにしているのはミスター・ボーンズの見る夢である。それはときに現実をふしぎな形で垣間見せ、示唆を与え、ミスター・ボーンズを導く。ときにはウィリーが出てきて、ひどいことを言ったりもする。
しかしミスター・ボーンズは、多分、ウィリーのことが本当に大好きで、ほかの誰かに飼われることなど望んでいなかったのだ。生きるためには様々な苦悩を耐えねばならない。しかしそれよりは、できることならば、死してウィリーのもとへ、つまりはティンブクトゥへ行きたかったのだ。
といってもミスター・ボーンズは決して死を望んでいるのではない。彼の最後の跳躍は、彼がよりよく生きるためのものだった。
とわたしは思いますよ。
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by agco | 2007-05-03 19:21 | その他創作
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あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
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