「シティ・オブ・グラス」 ポール・オースター

ニューヨーク三部作のその1。
結局わたしはこの三部作を、2→3→1という妙な順序で読んでしまったことになる。内容的には、そんなにはっきりとつながっているわけではないのだが、しかし、作者の事件というものの扱い方というか文章の書き方には、かなり明確な変化が見受けられるように思える。
だからこれは本当は1から順に読んだほうがよかったんじゃないかな。
でもまあ細かいことを気にしちゃいけない。これはこれでとても面白い読書体験だった。

とあるミステリ作家のもとへ、あるとき見知らぬ女からの電話があり、「探偵のポール・オースターさんに依頼したい件がある」と言われるが、作家はそんな名前ではなく、間違い電話だといくら言っても相手は納得しない。
気になって、結局ポール・オースターの名を騙り、電話の女のところへ行くと、奇妙な話を聞かされる。女の夫(まだ若い男)は幼い頃に父に殺されかけたことがあり、精神を病んでしばらく入院していたが、退院した今、刑務所に入っていた父が再びやってきて、彼を殺そうとするに違いないのだと言う。
作家は、その父親の若かりし頃の写真を一枚渡され、駅で張り込みをすることになる。そしてある日ついにそれらしい人物を見つけ、ホテルまで尾行をするが、この老人がそれ以降にとった行動はひどく不審なものだった。目的もなく町中をさまよい歩き、作家の目にはゴミとしか見えない様々なものを拾い、持ち帰る。それ以外は食事のためにカフェに寄ることしかしない。
ところがこの老人の歩く経路を地図上に描き出してみると、そこにはアルファベットが浮かび上がり、日々のそれらをつなげると、ある重要な意味を持つ単語、文章が綴られようとしていることがわかる。

このあたりまでの展開は、ミステリと読んでもさほどおかしくはない。おかしくはないが、やはりおかしい。この後の展開はさらにミステリの範疇をはみ出し、荒々しくも研ぎ澄まされた「文学」の領域へとなだれ込んでいく。
その後のオースターの小説をいろいろ読んでいる目から見ると、初期の頃のこの作品には荒削りな部分が目立つが、しかし荒い分パワフルで率直な、興味深い一冊である。
[PR]
by agco | 2007-05-02 19:03 | その他創作
<< 「ティンブクトゥ」 ポール・オ... 「七王国の玉座 上下」 「王狼... >>



あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
by agco
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31