長らくここが止まっていたのは、何も読んでなかったからではなくて、文庫にして6冊にも渡る壮大なユリウス・カエサルの記録を読んでいたためです。
ルビコン以前で3冊、ルビコン以後で3冊。ユリウス・カエサルの幼少時よりはじまり、その死後、甥のオクタヴィアヌスが実質的な後継者として権力を掴むところまで。 長い長いお話ですが、単なる長さの問題でなく、色々と考えさせられる内容であるために、この本を読むのはすごく時間がかかるのです。 考えることの主体は政治と軍事。2000年も以前の物語であっても、そのどちらもが結局は、人を見ること、状況を的確に判断すること、使えるものを既存の概念にとらわれず上手く活用することによるのだという事実は、現在においてまでも不変であるように思われます。 最終的には暗殺という非業の死を遂げたユリウス・カエサルですが、その成したこと、人を魅了したこと、卓越した先見性などを詳しく知ると、偉大な人であったのだなあとしみじみします。 彼の人生が物語としてめきめきと面白くなるのはガリア戦役の始まるあたりからなのですが、それはやはり軍事は傍から見てわかりやすく動だから。結果が比較的すぐに現れるからなのでしょう。でも彼の議事の場における優れた機知も、戦場で陣頭に立ち兵士を鼓舞する勇猛さも、どちらも同じくらいに人並みはずれており、そのふたつが1人の人間の中に同居することではじめてユリウス・カエサルという人は歴史上に類を見ない偉人となりえたのだと思えます。まあ運の部分もありますけどね。 塩野七生という人は、わたしに政治や軍事を真剣に考えさせてくれる、数少ない存在です。他に類似の問題を考えさせてくれる人といったら宮城谷昌光くらいでしょうか。単にわたしが知らないだけだと思うんですが。 多少頭は疲れましたが、良い読書でした。 「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル」 塩野七生
by agco
| 2004-10-19 23:59
| 伝奇・時代・歴史
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