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「せどり男爵数奇譚」 梶山季之

古書によらず、蒐集するという行為には常に狂気じみた部分がつきまとうものだが、本書は特に「書物」に限った奇譚を集めた短編集である。いちおう小説となっているが、ある程度は事実を踏まえているはずであり、その線引きがわからないのが怖いところだ。

物語は、男爵家に生まれながら、若いうちに古書の世界にのめりこみ、どうも道を踏み外した感のある男、通称「せどり男爵」の語りを作者が聞くという形式で進められる。
あるときは幻の和書を求めて奔走し、あるときは蔵書票の下に隠された秘密に肉薄し、香港で思わぬ拾い物をし、ときには騙され、ときには書物にまつわる謎から殺人事件解明への糸口をつかむ。きわめて特殊な嗜好の持ち主と出会うこともある。

古書というものを通して人間の中にひそむ闇にまで肉薄する興味深い本だ。
by agco | 2006-01-26 00:56 | その他創作
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あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
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