AIたちの住む夏の区界には、これで1000年ばかりの間、一度も人間のゲストが訪れていない。外の世界はどうなったのか、AIたちには知るすべがなく、一見平和な日常が永遠と思われる単調さで日々繰り返されている。
しかしそんな夏の時間は唐突に終わりを告げた。 <蜘蛛>たちが区界を食い荒らし、鉱泉ホテルとその周辺を残したすべての世界が消えうせてしまったのだ。蜘蛛と戦うために<硝視体>を用いて罠を作るAIたちを嘲笑うかのように、ランゴーニと名乗る少年あるいは青年あるいは男は、罠を逆手に取った苦痛の集積体を作り上げる。 苦痛、耐え難い苦痛と連呼される割にはあまりそれが生々しく読者に伝わってこないのは、登場人物たちがAIだということのほかに、この作者の文体が大きく影響しているのだと思う。 しかし、そんな部分をあまりリアルに書かれても、読者を振り落とすばかりであまりいいことはないようにも思えるので、これはこんなあたりでちょうどいいのかもしれない。 虐待と残酷さを基盤に置いた夏の区界という場所に住む、ジュールとジュリーという決して結ばれることがないと決められている二人を中心に物語は展開する。 この人間関係は、わりと好きだなあ。 しかしこれ、三部作の続きの部分はいったいいつ出るんだろう。作者は大変に遅筆であるそうなので、とても心配である。
by agco
| 2005-11-03 20:48
| SF
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