旧・内藤氏訳も持っているのですが、最初は比較などせず、素直に読もうと努めてみました。
おおしかし、最初のページからしてショッキング。 内藤氏訳で「うわばみ」だったところが「大蛇」になっている! いやべつに「うわばみ」でないと嫌だとか、そういうことを言いたいのではないのですが、なんとなく「うわばみ」という単語がものすごく頭にこびりついていて、星の王子さまといえば「うわばみ」だぜというような、よくわからない固定観念が……。 そんなことはさておき、さっと読んだときの雰囲気とかは、特に内藤氏訳とそんなに違ってはいなかったように思います。同じ話なんだから、そんなに全然違っていたらむしろ困るわけなんですが。 といいつつも、倉橋訳を読了してから改めて内藤訳を読んでみると、確かにいろいろ違います。内藤氏訳は子供向けを意識してかひらがな多用で、しかしそのくせ、とても難しい言葉をさらりと使っている。あまり意訳とかはしていないのかな? ときどき意味を掴みきれないほど観念的で、その分とても哲学的です。 哲学的なのは、原文からしてきっとそうなのだと思いますが、倉橋訳ではそのあたり、もう少し説明しようと試みている感じがします。言葉遣いや台詞まわしがこなれていて、普通に大人むけの小説を読んでいる感じ。普段の倉橋氏本人の著作の方がずっと難解に書かれています。 どっちがいいとも言えない出来で、好みは分かれそう。しかしひとつだけ、倉橋氏もご自身のあとがきで述べていることですが、「飼いならす apprivoiser」という単語を「仲良しになる」と翻訳したというところ。 内藤氏訳ではそのまま「飼いならす」なんですよね。 わたし、ここは「飼いならす」の方が良かったと思う。単に仲良くなるのとは違った意味を、たとえ子供には理解できないかもしれなくても、そっと忍ばせておいて、大きくなった子供をどっきりさせてやって欲しかった。かな。
by agco
| 2005-09-07 22:51
| 児童文学・絵本・YA
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