デビュー後まもなくO. ヘンリー賞、ヘミングウェイ賞、ピュリツァー賞などを総なめにした、インド系の新人作家の短編集。
ピュリツァー賞の位置づけがわたしにはよくわからないのですが、O. ヘンリー賞の方はものすごく納得のいく感じがします。こまごまとした普通の人々の日常の中から、さりげないと見えて実は意味深いできごとを切り出して来るその手法。そっと人の心理に寄り添い、小さな爪で、かすかな傷をつけていく。流血するほどではないが、薄赤く残り、いつまでもひりひりと痛む。 表題作「停電の夜に」は、最初の子供を死産でなくした若い夫婦の話です。 その出来事があってから、互いの歯車がうまく合わなくなっていたふたりは、停電の夜が何日かつづいたのをきっかけに、暗闇の中で蝋燭をともし、電灯の下では言えなかった小さな秘密を互いに打ちあけ合うようになります。 暗い中でのそうしたふれあいは、彼らにつかのまの親しい空気を呼び戻すようにも思えますが、彼らがその内部に隠し持っていた一番の秘密はもっと重いものであり、もはや修復のできないものでした。 もっとも痛いばかりではなく、じわりと染み入るやさしい話もあるんですよ。
by agco
| 2005-07-25 23:54
| その他創作
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