豚ともモグラとも呼ばれる太った男<ぼく>は、地下採石場跡に、核戦争を乗り切るための方舟として、シェルター設備を作り上げた。それに乗り込んだのは、昆虫屋と呼ばれる中年男と客寄せのためのサクラの男、そしてその相棒の女。
そもそもその三人が方舟に乗り込んだ状況からしてが<ぼく>には気に食わないものだったのだが、彼ら四人が方舟内部で不審な侵入者を見つけたことから、事態はいっそうに<ぼく>の思惑を超えたところで動き始める。 突然始末を押し付けられた死体、巨大便器に吸い込まれて動けなくなってしまった<ぼく>の足、老人清掃集団ほうき隊の不気味な副官、消えた女子中学生たち。 果たしてこの方舟で最後まで生き残るのは誰なのか。 久しぶりに安部公房を読んだが、非常に彼らしい作品だった。 核戦争から生き延びるためのシェルターをひとりで整備する<ぼく>の努力は虚しくも思えるが、誰一人それを馬鹿にすることはできないばかりか、最終的には方舟という考えに取り付かれ、外の現実から逃れて唯一生きのびられる場として求めるようになる。 ラストシーンは皮肉であるが、それでなくてはならないという趣きである。
by agco
| 2005-01-02 19:20
| その他創作
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