カテゴリ:エッセイ( 32 )

「ツチヤ学部長の弁明」 土屋憲二

こう言ってはなんだが、土屋憲二の文春のエッセイ集は読んでも読んでも後に残らない。多分、一度読んだことのある本をもう一度最初から読んでも気づかないのではないか。それくらいに何を読んでも同じっちゃあ同じテイストで書かれている。
しかし面白くないというわけではないのがふしぎなところで、あの文体はかなりくせになる。しかし下手に真似をしようとすると痛い目を見るのでやめておいたほうがいい。

といいつつ本書はいつもの文春のエッセイ集ではなく、土屋憲二が学部長としての立場で発表した文章を主に集めた一冊であり、多少毛色は変わっている。
おお教育についてはなんとまともなことを言っているのだ。まともでないことも言ってるけど。

そして本書の解説には土屋氏を学部長に任命した前学長なる人物の文章が載っているのだが、これはなかなか見ものである。
「ツチヤ風スタイル」を少々取り入れつつも、実に謹厳、実にクールに本書の内容を分析するその手腕は見事。これまで土屋氏の本の解説において、あのツチヤ調に挑んでは討ち死にしてきた人々を見慣れているだけに、さすがは前学長などと偉くなる人間は違うと広く知らしめた(気がする)。

まあそんなわけで、いつも読みなれたものとは違っていた部分が新鮮でした。以上。
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by agco | 2007-04-02 23:32 | エッセイ

「30年の物語」 岸恵子

こんなふうに容姿にも恵まれ、教養豊かで、美しい言葉を操り、なおかつ人を見る鋭いまなざしを持った女性がいるのだということに、なによりも感銘を受けたかもしれない。
岸恵子という人のことを、この本を読むまでわたしはほとんど知らなかった。出演作もひとつも見ていない。しかし、さらりと語られるエピソードの数々はひどく印象的であり、これがすべて現実に起こった出来事であるということが信じられないほどに物語性に満ちている。
よい目と磨きぬかれた感性と、さらには驚嘆すべき表現力が合わさらなければ、こんなふうな文章は書けない。
ひとりの女性の中にそれらがすべて同居しているという奇跡にも似た事実に感謝の念を捧げたい。
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by agco | 2006-05-31 23:55 | エッセイ

『私の「漱石」と「龍之介」』 内田百閒

百閒先生が書いた文章のなかから、漱石(先生)と龍之介(お友達)に関するものだけを抜き出してきたというコアなセレクションの一冊。
若い頃から百閒先生は妙なところで偏屈だったり、意外にミーハーだったりしてお可愛らしいです。
ときどき、実際にあったできごとを記述しているはずなのに、まるで百閒先生の創作の中の一場面のような、異世界に迷い込んだような感覚が表出しているのも面白い。
普通の人には見えないようなものがこの方の目には見えていたのかなあと思います。
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by agco | 2006-04-23 23:44 | エッセイ

「ブタの丸かじり」ほか 東海林さだお

正確にいうと、
「ブタの丸かじり」
「ダンゴの丸かじり」
「親子丼の丸かじり」
「スイカの丸かじり」
「ケーキの丸かじり」
「駅弁の丸かじり」
「昼メシの丸かじり」
「鯛ヤキの丸かじり」
8冊を一気読みしました。

そんなの一気に読むものじゃないだろう! とお怒りの方。わたしもそう思います。
いやでもね、するするさらさら読める本だけに、ついつい次へと手が出て、気がつくとこんなにたまっていたのです。しかもこれだけ大量に読んでも胃にもたれない。あっさり薄味。すでに読んだ部分をもう一度読んでも苦にならない。ある意味、すごいことだと思います。

これだけ読めば、中には行ってみたいお店や食べてみたい料理、自分で作ってみたい料理などがいろいろでてきます。海外に長期に渡って赴任している人が読むには確かに苦痛をともなう本かもしれません。(いてもたってもいられなくなるという意味で)
しかしわたしの場合には東海林さだお効果はもっと意外な方面に出るのです。

食事時に、あの東海林さだお口調で脳内実況中継が入るのです。

折りしも本日の夕食は鳥釜めしに海鮮みそ鍋でした。なにやらミスマッチな取りあわせな気がしますが、気にしない。食べたかったんだから仕方ありません。とりあえず登場食物多数であるため、あちらこちらで複雑な食物関係が生まれ、濃密なドラマが展開していたようでした。
エビとカキの主役の座を巡る熾烈な戦いが水面下で行われ、最後にはカキが長老に場を譲る形で円満に解決したようでした。

食事のたびにこんなことを考えている(のか?)東海林さだおってすごいなー。
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by agco | 2006-01-28 21:57 | エッセイ

「ヒトのオスは飼わないの?」 米原万里

ぶっちゃけ表題への答えは「飼いません」の一言で終了。
飼い犬も飼い猫もどんどん増えていく米原家の波乱に満ちた、微笑ましい、切ない日々の実録であります。
いいなあ~。にゃんこと一緒に暮らしたいな~。でもきちんとお世話をできる自信がないし、ペット不可の部屋に住んでいるので当分無理ですな。
しかし猫語を華麗に操るロシアのおばさんのエピソードはすごかった。
猫語……全世界共通なんだ……。そうか……。
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by agco | 2005-11-23 23:03 | エッセイ

「伊勢エビの丸かじり」 東海林さだお

本書には一箇所だけ「異議あり!」と指をつけつけてやりたくなる部分がある。
メロンをどこまで食べるべきかという話のときだ。

あまりに皮の寸前まで食べるのはお行儀が悪い。貧乏人だと思われる。
かといって、あまりに沢山実の部分を残すのも、なによ見栄を張っちゃってと思われる。
それゆえメロンを適度に残すのは難しいと東海林さだおは言っている。

ここまではいい。人としてわかる。問題は次だ。

同じく残し方が難しいものとして、旅館の朝食に出てくる味付け海苔が例に出される。
これも、世のお父さんたちは、一袋に五枚入っているのを何枚残すかで悩むというのだ。全部食べるのは意地汚いようで外聞が悪いというのだ。

ちょっと待て。それ違うだろ。メロンと海苔を一緒にしちゃいかんやろ。
メロンを残すといっても、それはどこまでを「食べる部分」と見なすかという個人の線引きの問題であり、あくまで残された部分は「食べられないもの」なのだ。
しかし海苔は最初から五枚入っている以上、一旦袋を開けた以上は選択肢は「全部食べる」しかないのではないか。残すような半端な食べ方をするくらいなら、最初から手をつけるべきではないとわたしは思う。
だって残された海苔は、十分「食べられるもの」であるのに、無理やりゴミにされてしまうのだ。なんてことだろう残虐非道だ。そんなことをするお父さんたちは漁師に呪われてしかるべきだ。
そういうわけで、東海林氏には、ぜひとも心を入れ替えて、海苔を五枚全部召し上がっていただきたいのである。
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by agco | 2005-10-31 22:28 | エッセイ

「キャベツの丸かじり」「猫めしの丸かじり」 東海林さだお

丸かじりシリーズ、ちびちびと読みすすめています。
気楽に読め、ほんのりとあったか気分になり、にやりと笑い、読み終わった後にはあっさりと忘れている。そんなくらいの軽い本です。でもこれはこれでいい。キャベツや猫めしについてのエッセイを読みながら滂沱の涙を流すような展開は想像できません。

むしろ本書の偉大さはその単調さにあると思います。継続は力なりっていいますが、まさにこのことですね。
読み終わって一週間後に一からまた読み返しても、内容をすでに忘れていて再び楽しめそうですが……いやいや、これこそが癒しというものなのです。
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by agco | 2005-10-13 21:00 | エッセイ

「愛がなくても喰ってゆけます。」 よしながふみ

よしながふみの食エッセイ。
この人の「西洋骨董洋菓子店」(月9ドラマの原作だが、まったく別物と思ったほうがいい)を読んだときにも思ったことだが、この人の描く料理は本当美味しそう! 作者ご自身の食に対する思い入れがそのまま画面に表れているのだろうか。
お店を紹介しつつ、恋愛こみの人間ドラマをさらりと描きつつというスタイルだが、ドラマの方は割りとどうでもよくて、お料理に目は釘付け。ここに出てくるお店の中で行った事があるのは2軒だけだ…。ああん…。制覇とはいわなくても、ちょちょいと何軒か行ってみたいお店がある。

ところで本書に出てくる荻窪のうなぎ屋さんは、以前に東海林さだおのエッセイの中に出てきたところと同じお店ではないだろうか。ダブルで誉められてしまうと、なおさら気になる。
うなぎ~荻窪でうなぎ~~。
お酒コミでひとりあたま予算7000円ほどだが、友人諸氏、どなたかご一緒しませんか。
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by agco | 2005-09-20 23:14 | エッセイ

「真夜中の太陽」 米原万里

旅のおともに米原万里は最適という気がしませんか。
先週末は一泊二日で温泉旅行だったので、すかさずこの本を持っていきました。積読本のうずたかい山からこの一冊をわざわざチョイス。以前仕事で長崎まで行ったときも、米原万里だったなあ。去年の冬に帰省したときもそうだった。
あの舌鋒鋭いけれども軽妙な文章が旅の空気に似合っているのです。エッセイ集なので、一遍が短いところもポイント。

本書は2004年8月に文庫になっておりますが、中に書かれているのは主に2000年前後の時事問題です。ここで語られているK泉そーりに対する毒舌がいちいちツボにはまって、そうよそうよと激しく同意してしまいました。
米原万里はいっそ、新党を立ち上げてK泉政権潰しに乗り出したらいい。
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by agco | 2005-09-13 22:49 | エッセイ

「本棚探偵の回想」 喜国雅彦

前作「本棚探偵の冒険」 喜国雅彦にひきつづき、ミステリ専門古書蒐集家の著者が、本にまつわるあれこれのことを面白可笑しく、シビアに切々と、マニアックに情熱豊かに語るエッセイ集。

その意欲もすごいが金の使い方もすごい。一日五万円分の新刊書を、違う書店、違う出版社、違う傾向の中から選んで買う企画なんかわたしも勇んで参加したいものだ。
誰か「これを使いなさい」といって五万円をぽんとくれないものだろうか。←素の感想
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by agco | 2005-09-05 22:58 | エッセイ



あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
by agco
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