カテゴリ:FT・ホラー・幻想( 40 )

「七王国の玉座 上下」 「王狼たちの戦旗 上下」 ジョージ・R.R. マーティン

文句なしに面白い、エピックファンタジーの超大作。図書館で借りてハードカバーで読んでます。実は今「剣嵐の大地 上」まで読み終えたけど、その先の部分が借りられていてすぐには読めない状態なので、とりあえず2部の最後までのことを書きます。
といっても、ストーリーの詳しいことを書いちゃうとネタバレになりそうなので、極力そのあたりは伏せておきます。

まずこの物語、実に多くの人々の視点から語られており、その分、どこかの陣営に偏ったりはせず、様々な境遇、立場の人間の胸中が垣間見え、重厚にして多層的な構造をしております。単純な勧善懲悪じゃない、そういう混沌としたの大好きです。
読むにつれどんどん語り手がバトンタッチされていくわけですが、この語り手役に抜擢された人物であっても、話の展開によっては容赦なく途中で死にます。誰がこの先どんな運命をたどるのか、まったく先の予想をさせない(といっても、ある程度わかる部分はなくもない)シビアな話の運びはある意味非常に現実味にあふれております。
ものすごい数の登場人物が出てくるので、誰が誰だかわからなくなることもしばしですが、ひとりひとりはきっちり人間的に描かれていると感じます。

あえて誰が一番好きかといえば、ティリオン・ラニスターですかね! だってあの人かわいそうなんだもの…。パパが憎いよ。
それ以外にはアリア、ジョンあたりはかなり高ポイントであり、サンサは最初の頃は好きになれなかったけど、話が進むにつれて段々「いやいや、あれであの子もがんばってるんだよ」と寛大な気持ちで眺められるようになりました。
そして意外なあたりでサンダー・クレイゲン氏あたりが好きかもしれません。あいつ、あんなんだけど、いい奴のにおいがぷんぷんします! いっそサンサとくっついちゃえばいいのにと思うんですが、そうなる前にあの人、サンサを助けて死んじゃいそうな危険な気配もするので油断がなりません。

いつもいつも、いったいこの先どうなっちゃうのという衝撃的な展開で巻が切れるので、途中でやめることができなくなって、必死で先へ先へと読んできましたが、しかし現在刊行されている分を全部読んでも、ゴールまでにはまだまだ遠いのですよね。おお…登場人物が多いだけに、あんまり中断が長いと話を忘れてしまうよ…。
しかし先が楽しみなお話であります。
読んでも読んでも終わらないと思ったら、ハードカバー二冊は文庫にすると5冊分。すなわちこの第二部までで、文庫10冊読みきったことになるのですね。そりゃあなかなか終わらないはずだよ。
近々、とりあえず第三部まではばりっと読破しようと思っております。
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by agco | 2007-04-18 23:57 | FT・ホラー・幻想

「壜の中の手記」 ジェラルド・カーシュ

この本は本当は昨年12月くらいに読んでいるはず。
しかし読んだのは文庫になる際に追加された2編と、お気に入りの「豚の島の女王」と、ロングバージョンになったという「狂える花」のみ。
ほかのお話は、以前にここにハードカバー版で感想を書いているので、まあもういいかと。
文庫になってお安くなり、さらにお話が追加されたり長くなったりといろいろあってお買い得な一冊。
でも追加のお話はめっちゃ短くてあまり印象に残りませんでした。悪くはないんだけど。
やはり改めて読んでも「豚の島の女王」が一番好きでした。
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by agco | 2007-02-03 22:52 | FT・ホラー・幻想

「伯林蝋人形館」 皆川博子

ナチスが台頭しつつある戦時下ドイツ。
報われない青年将校とロシアから亡命してきた貴族の娘、蝋人形師と詩人と歌手とユダヤ人の富豪とほか何名かの人生が、怪しい幻のなかで複雑に交差する。
6つの幻想譚と6つの記録から構成された物語は、最後の「書簡」によってその実相を明らかにされ、鮮やかに意味を反転させる。この手の手法は皆川博子にとっては十八番であると言えるだろう。相変わらずの見事さではあるが、二重三重にどんでん返しがあって驚愕のあまり息つく暇もなかった「死の泉」にくらべれば少々薄味。

どうでもいいが、最近久しぶりに会った友達が、この作者のことを「皆川さま」と呼んでいたのでびっくりした。でも様をつけて呼びたくなる気持ちはわかる(笑)
そのお友達が言うには「総統の子ら」はすごくいいお話だそうなので、次はそれに挑戦しようと思っている。文庫になったしね。
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by agco | 2007-01-16 23:46 | FT・ホラー・幻想

「絵小説」 皆川博子

本書に収められた6つの物語は、少し特殊な製作過程を経て作られている。
皆川氏が1つの詩を指定し、それに基づいて宇野氏が絵を描き、その絵を見て皆川氏が物語を書く。最初の詩のイメージを、絵師の宇野氏の感覚というフィルターを通すことによって別種のものに変換し、それを新たに読み解くという過程を経ているのである。
そのことによって、おそらくは皆川氏個人では喚起し得なかったイメージが、随所に盛り込まれることになっているのだろう。
ただ、もともと皆川氏の文章は色彩や物の形の印象が非常に鮮やかで、ふしぎと絵画的であるという気もする。そのため普段との違いは文章だけを見ていてはわからない。
それだからきっとこれは、元になった絵画と見比べながら読むことで、文章と絵画が相補的に高めあう効果を楽しむためのものであろう。

物語の内容そのものはいつもの皆川博子的、絢爛とした退廃と女(少女)の残酷さ、脆さ強さが鋭いメスで切り取られている。短編集だけにそれぞれは小粒であるが、ちょっと息抜きをしたいときなどに読むにはちょうどいい。
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by agco | 2006-11-29 13:36 | FT・ホラー・幻想

「竜宮」 川上弘美

川上弘美を読むのは二作目。
現代の日本を舞台としていると見せかけながら、実はそこは微妙に肌触りの違う異世界だったという印象。それともさらに、異世界と見せかけておいて実はそこは現実なのだろうか。
そんな、虚と実が薄紙一枚を隔てて接しあっているような、生々しい不安定さが川上弘美の物語にはある。
この人はどうやってこれらのお話を書いているのだろう。頭のなかで構成を練って、それに忠実に文字を起こすというよりは、筆先が進むに任せて自分はそれを少し離れた高見からじっと見下ろしているのではないか。そんなことを思ってしまう作風だ。
本書に収められた短編は、特にどれが傑出しているというのではなく、粒がそろっている印象がある。そのなかで、一番最後の「海馬」を読んで、普通はこういう物語に出てくるのは「人魚」であろうが、そこがあえて「海馬」であるのが川上弘美なのだと思った。
この作者の長編が読んでみたい。
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by agco | 2006-11-27 22:36 | FT・ホラー・幻想

「シャルビューク夫人の肖像」 ジェフリー・フォード

相手の姿をまったく見ずに、会話と過去の語りと声だけから想像して肖像画を描いてほしいという、なんとも奇妙なシャルビューク夫人の依頼を肖像画家のピアンボは引き受けた。
もしも本物そっくりに描くことができたら巨額の報酬が約束されている。そしてそれだけの金があれば、口を糊するために社交界で身をすり減らし、つまらない肖像画を描く必要はなく、画家として本当に描きたいものを描き、自らの才能を極めるために全力を傾けることができるようになる。
内面に様々な矛盾を抱えながらも夫人の肖像画に取り組むうちに、ピアンボは次第に夫人の奇妙な話に幻惑され、また、目から血を流す女の奇怪な事件に巻き込まれてゆく。

物語は一応ミステリーのくくりのようなのですが、夫人の語りといい、ピアンボの周囲に起こる怪しげな出来事の数々といい、半ば以上に幻想小説の趣の強い物語です。
でも作者がジェフリー・フォードなので、そうこなくっちゃ! という感じで、事態が胡散臭げになればなるほど読み手としては気持ちが盛り上がります。
謎の真相の部分については割と、やはりそうきたかという感じで意外性はないのですが、この物語の真骨頂はそこまでの語り口や繊細な背景・心理描写にあるので、まったく問題ありません。
さりげなく、本書で一番胸に迫る描写はシャルビューク夫人に関するものではなく、ピアンボとその友人の画家のシェンツ、そしてふたりの師匠にあたるM.サボットにあるような気がします。この三人の関係はかなり胸が痛い…ですよ。
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by agco | 2006-11-12 00:04 | FT・ホラー・幻想

「真実の帰還」 ロビン・ホブ

ファーシーアの一族三部作の完結編、上下巻にて堂々のご登場でありますが…堂々としすぎ! なにこの厚さ! 京極に挑戦でもしているのか!
とでも言いたくなるような外観ですが、文章は読みやすいのですらすらいけます。物語も紆余曲折をたどりながら、ドラマティックに、執拗に、悲嘆に満ち、結末にむけて一路ひたはしります。
訳者の方はあとがきにおいて「このラストには賛否両論があるだろう」と書いていますが、わたしはこれでいいと思います。どこにもまったく傷の残らない、みんなが幸せになりましたなんていう完全無欠のハッピーエンドなんてむしろ嘘っぽいし面白くない。与えられた状況下で、最大限に努力をし、そして得たものに当人が満足できるなら、それがどんなに客観的に辛いものであってもそれはハッピーエンドでしょうと思います。
ただひとつ、作中非常に重要な役割を担っていた「道化」と主人公のかかわりが、ええっそれで終わりなの!? というあっさりぶりだったのですが、それは次のシリーズへの前ふりだったようで、次回作でまた道化は登場してくれるらしい。よかった、よかった~。
次のシリーズがはやく刊行されることを待ち望んでおります。
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by agco | 2006-07-11 22:29 | FT・ホラー・幻想

五月の読書補足

恩田 陸「ねじの回転」
西崎 憲「世界の果ての庭―ショート・ストーリーズ」
伊坂幸太郎「砂漠」
ほか、サイエンス系の本を何冊か読んだのですが、すでに記憶から薄れかけています…もう感想書くのも省略。すみません。
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by agco | 2006-05-31 23:59 | FT・ホラー・幻想

「沼地のある森を抜けて」 梨木香歩

叔母の時子が急な心臓発作で亡くなって、久美は叔母のマンションとともに、家宝のぬか床を受け継いだ。聞けばぬか床は、久美の曹祖父母のふたりが故郷の島から駆け落ち同然に出てきたときに、一緒に持ってきたものだという。故郷の島の沼地の土が、ぬか床の中には含まれているという。
しかしこのぬか床が実にふしぎな代物だった。気に入らない人間にかきまわされるとひどく嫌なうめき声を上げ、まれには中から卵が出現し、それが孵ると奇妙な人々が現れる。久美の生活はひっかきまわされ、ぬか床に支配されて生きているような気持ちになる。
そのうち時子叔母の死因が久美の両親の死とも共通するものであることがわかり、久美はぬか床を故郷の沼にかえすために、風野さんという風変わりな知人とともにさびれた島を訪れる。

あいだに時子叔母の日記や先祖の書いた文書、また一見本筋とは関係のない奇妙な挿話(のちに、関係は判明する)を挟んだ、多面的な物語です。
ふしぎな話といってしまえばふしぎな話なのですが、たとえば川上弘美の物語のふしぎさは感覚的で文系的であるのに対し、梨木香歩の書くふしぎは少し理系の匂いがして、分析的かつ理性的です。まずは理論で理解しようとして、それがだめだとわかってはじめて、そういうものだと受け入れる。そのあたりの感性というか姿勢は、わたしにとってはとてもしっくりくるものです。
だからといってすべてが理詰めかといえばそうではなく、感覚でわかる部分というものをとても豊かに表現できていると思います。
ぶっちゃけ一言でいうと面白い。
書く話、書く話にどれも外れがない。
梨木香歩はすごいです。
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by agco | 2006-02-25 14:56 | FT・ホラー・幻想

「ネクロポリス」 恩田陸

パラレルワールド的な現代の英国にはV.ファーと呼ばれる島があり、日本と英国の習俗がふしぎな具合にまざりあっている。その一角にある聖地アナザー・ヒルには「ヒガン」の時期になると「お客さん」と呼ばれるつまりは死者が実体をもって現れる。
東京大学の院生であるジュンはそのアナザー・ヒルに入るパスポートを、縁故を頼って手に入れた。はじめはヒガンという行事に対して懐疑的だったジュンは、次々と遭遇するふしぎな事件に次第に慣らされ、アナザー・ヒルの存在の根幹にかかわる問題にまきこまれていく。

この話、最初の方はすごく面白いのですよ。
怪奇な事件が次々と起こり、ふしぎな習慣や伝承が明らかにされつつあるなか、謎また謎の展開がつづきます。
それが全体の3/4をすぎたあたりから猛烈に話が加速をはじめ、最後には「え、それでいいの?」というような釈然としない結末に。ジュンという人物は本書のキーパーソンなのに、なぜか最後の方だけろくすっぽ活躍しないし。微妙に辻褄あってない気がするし。なあなあな感じで謎の説明が省かれているし。
非常に微妙な読後感のする本でした。いいのかなあこれで…。
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by agco | 2006-02-18 00:29 | FT・ホラー・幻想



あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
by agco
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