本書は作者の前作「ベルカ、吠えないのか?」に対する猫的アンサーであると作者紹介欄に書かれているが、それで内容を予想しながら読むと大いに外す。
その外すところがむしろ古川日出男的にはしてやったりなのかもしれない。 猫と猫をカウントする少年老女青年中年女等々の人々(いわゆるキャッターズ)を軸に物語は進んでいるようないないような、とにかく群像劇であり、どこに視点の中心を持ってくるかは読み手の自由である気もする。 淡々と語られていく荒唐無稽な物語の断片・断片をつぎあわせて、どういうストーリーをそこに見るのかも、ある程度は読者の自由である気がする。 暴力や死や贖罪もそこには書かれているが、おそらくは本書のテーマはタイトル通り「LOVE」なのだろう。LOVEというのは広い意味を持つ言葉である。そこもまたどう受け止めるかは読者次第なのかもしれない。 そんな自由度の高い本書であるが、私的におおと思ったのは二本のギターを持つミュージシャン(のたまご)の彼である。最初の物語と最後の物語に登場する彼のラストシーンがとても鮮やか。 工事の音にまぎれていても、彼の演奏はきっちり空まで届いただろう。 本書の読了後に爽やかな余韻が残るのは、彼のおかげである部分が大きい。
by agco
| 2006-11-28 22:52
| その他創作
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