ブラディ・ドール(シリーズ1~10巻) 北方謙三

ハードボイルドというと、やたらと登場人物が男らしさみたいなものにこだわって、「男ってやつは~」みたいな語りが入るものだという偏見があったのだが、なんと偏見ではなかったことが判明した!(笑)
しかし、このブラディ・ドールというシリーズは、それが決して嫌味ではない。確かに出てくる登場人物が毎回そろいもそろって馬鹿馬鹿しいほどの頑固さで自らのこだわりを貫こうとし、命をかけて何かを取り戻そうとするのだが、そういうのって本当は馬鹿にしちゃいけないものだろう。
作中、登場人物たちが使う車、煙草、好みの酒などの数多くのアイテムは、非常に効果的にそれぞれのキャラクターの個性を演出している。ブランド名みたいなものは、下手な使い方をするとどんどん話をスノッブにしていくものだが、このシリーズにはそれがない。「物」や「ブランド名」に伴うイメージを上手く使う作家といったら他に石田衣良を思い出す。どちらも男性作家だ。男性は基本的に物との付き合い方を知っているという感じがする。気のせいかもしれないが。
毎回主人公が異なるシリーズもので、つまりは一冊ごとに新しい主要登場人物が出てくるのだが、それがみんな個性的でいい味を出している。ブラディ・ドールという店を中心に、そんな男どもが仲良くしたり、また殺しあったりしながら濃い関係を築いている。それはちょっと羨ましい濃密さであり、また作中でとある人物が語っているように、一部の関係はプラトニックなほもみたいなものである。しかしそれすらも、その関係の中に分け入っていくことのできない女の目からしてみれば、少し羨ましい関係だとも言える。
しかし、男、男とうるさいこの物語では、実は女は決してないがしろにされてはいないのだ。各物語に登場する女性たちはみんな存在感があり、きっちりと生きている。時々そんな女がいるかというほど美しく書かれている女もいるが、それをいうなら当作品の男たちも、みんなありえないほどに男らしい男であるわけだから、お互いさまというもので、現実よりも薄皮二枚分ほど上にある理想を描くのがロマンというかハードボイルドの醍醐味なのだろう。
しかし人死にの多い物語で、大体この人いいなと思った人から死んでいくという鉄則(?)があり、途中で何度嘆く羽目になったかわからない。それってつまりは、死に近しいところにある人ほど魅力的に見えるということなのかもしれない。とはいえ、いくらフィクションであるといえども思い入れのある人の死は悲しいものである。
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by agco | 2004-08-09 00:34 | その他創作
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あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
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