「彼方なる歌に耳を澄ませよ」 アリステア・マクラウド

カナダ東端の島に渡ったスコットランド移民の子孫アレグザンダーは、幼い頃に両親と兄をひとり亡くし、その関係で双子の妹とともに祖父母の家で育てられた。その当時すでに10代半ばになっていた三人の兄たちは、それとは別に彼らだけの生活をはじめた。
かくして兄弟たちの生活環境は大きく隔てられることとなった。幼い双子たちは町中で高い教育を受け、上流社会の仲間入りを果たし、兄たちは野生にほどちかい労働者階級として生きた。
それでも彼ら兄弟たちの間には確かに通じ合うものがあった。
長じて歯科医となり、自らの家庭を持つようになったアレグザンダーは、社会の最下層に近いところで酒びたりの生活を送っている最年長の兄のもとを、週末ごとに訪れるようになる。そこには愛情と、暗黙のうちに通じ合う、互いの人生への了解がある。
移民としての生き方、抱え込んだ伝承の数々、階級間の距離、遠くにありながら近い関係を、時間を前後に行き来させながら淡々とできごとを積み重ねながら描き出す。

ラストがじんわりと胸にしみる物語でありました。
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by agco | 2006-04-21 23:45 | その他創作
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by agco
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