「福音の少年」 あさのあつこ

あさのさんは何を狙っているんだろう…。

本書を読んでいて非常に違和感をおぼえるのは、一般小説の手法と児童文学的手法が入り乱れているからだと思う。
生々しい夫婦の性生活なんかを臭わせる傍らで、とてもベタな感じの<暗殺者>っぽい人が、あまり背景を書き込まれることもなく登場し、非常にリアリティのない役どころで場をかき乱して行く。
主人公の明帆と陽という高校生ふたりがやたらといちゃいちゃとして、おまけに陽が恐ろしいほどに魅力的な声の持ち主だということまでは、百歩譲ってよしとしよう。
しかし陽が明帆にむかって「人殺しの目だ」みたいなことを言っちゃうのは、冷静になって考えてみると失笑でしかない。
これがNO.6のようなSF仕立ての未来が舞台だというのならそれでもいい。しかし現代日本の片田舎でそれをやられるとかなりキツイ。
そのキツさに見合うだけの説得力ある背景が書かれていれば済む話なのだが、こういうところだけ児童文学的といおうか、理屈も何もなく「そういうものだから」という感じで流されてしまうところがよろしくない。
現代日本の片田舎の生活、ごくありふれた家族の営みのようなものを、細やかに書けば書くほど、暗殺者やクズな政治家や虚無を抱えた高校生という存在が、非常に周囲にそぐわないものとして浮いてしまうのだと思う。

あさの先生は、「大人向け」の小説の書き方というものを、少し考え直してみてはいかがだろうか。
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by agco | 2005-10-29 00:40 | その他創作
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