「ムーン・パレス」 ポール・オースター

「ムーンパレス」とは、主人公の<僕>が最初に一人暮らしをはじめた部屋の窓から見える、中華料理屋の名前だった。しかし月はその人生に大きな影響をあたえ、彼を導く。
幼い頃に母を亡くした彼は、クラリネット奏者だった伯父に引き取られて育つ。伯父は変人だったし、あまり人生というものに対してやる気のない男だったが、<僕>にとってはとてもいい友人のような人だった。
彼が大学に入り、あと一年で卒業といった頃に伯父は亡くなり、それに茫然自失した<僕>は、残り少ない貯金を数え、生活費を切り詰め、伯父にもらった蔵書を売ってなんとか卒業の日までこぎつける。
金がないという窮状を誰にも訴えなかった彼は、アパートを追い出された時点でひとりきりで、やがて公園に住み着くことになる。そこで浮浪者のようになんとか日々をやりすごしていたが、冬が近づき、雨に打たれて風邪を引き、とうとう彼は死にかける。そんな彼を救ったのは、大学時代の友人と、まったくの偶然で知り合ったキティ・ウーという名の女性だった。
徴兵も逃れ、いったん友人の家にやっかいになることになった彼は、キティとの恋愛でつかのまの幸せを掴み、また、車椅子の老人の世話をするという住み込みの仕事を見つける。
老人は奇矯というのがふさわしい偏屈な男で、おそろしくドラマティックな過去を持っていた。<僕>は老人の語る半生を記録し、それを老人の一度も会ったことのない息子へと送るようにと頼まれる。老人の死とともにその約束は果たされ、<僕>は老人の息子ソロモンに会う。

人から人への連鎖が運命的につながっていく物語。
そんな偶然があってもいいのかという声もあるかもしれないが、むしろそんなことはあっていい。だってフィクションなんだから。しかしそのフィクションよりも、現実はさらに上を行くことが多いんだから。
<僕>の片意地を張った頑固さ、自分を滅ぼすような行為に頭から飛び込んでいくようなところ。その若さゆえの暴走がとても瑞々しく書かれた話だったと思います。
そしてじいさんがステキだ。←重大なポイント
[PR]
by agco | 2005-10-02 22:29 | その他創作
<< 「ジーヴズの事件簿」 P・G・... 「蒲公英草紙 常野物語」 恩田陸 >>



あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
by agco
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30