「予告された殺人の記録」 G・ガルシア=マルケス

事前にありとあらゆる手段を用いて予告され、当人もまた自分が狙われていることを知っていたのに、その殺人は起こってしまった。その犯行を避けようと、当の犯人たちが散々に努力したにもかかわらず、あまりにも多くの偶然、ためらい、怠慢、不信が、サンティアゴ・ナサールを無残な死へと導いた。

登場人物が多すぎて、途中で誰が誰だかわからなくなりながらも大変興味深く読んだ。
意外にも一番印象に残ったのは、サンティアゴ・ナサールに死をもたらす原因となったアンヘラ・ビカリオが、後に、壊れた婚姻の相手のバヤルド・サン・ロマンに突然恋をして、17年間にも渡って手紙を書き続けたこと。そしてそれらの手紙を持って、バヤルド・サン・ロマンが彼女の元へとやってきたことだった。
彼らはその後どうなったのか、作品中では語られていないが気にかかる。
このエピソードは、「コレラの時代の愛」なる短篇へとつながるモチーフであるらしいので、そちらをぜひ読んでみたいところ。

構成の妙について解説で散々語られている本書だが、あらゆる人とのかかわりの中から語られつづけてきたサンティアゴ・ナサールの死、その詳細な描写が最後になって圧倒的な迫力で胸を打つ。無残な死に様であり、その後の無様な周囲の対応はすでに明らかにされており、陰惨なばかりの印象であったその最期を、作者はそこで鮮やかに反転させてみせる。
不思議に笑顔のイメージが残る物語である。
こんな物語であるのに読後感が奇妙に明るいのは、作中に含まれたユーモアのためばかりでなく、ラストシーンに用意されたサンティアゴ・ナサールの描写が大きくものをいっているのだと思う。

追記
「コレラの時代の愛」って翻訳されてないじゃん! ダメじゃん! どうすりゃいいのよ!
原題は「L'Amour au temps du cholera」というらしい。今からわたしにスペイン語を勉強しろというのか、そうか。
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by agco | 2005-08-04 21:08 | その他創作
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