「凍りついた香り」 小川洋子

小川洋子を沢山読んでいる人がいたら訊いてみたい。この人はいつもかもこうなのか?
わたしの小川洋子歴は「沈黙博物館」「博士の愛した数式」に続いて本書でようやく三冊目だが、過去に読んだ二冊とのあまりの共通項の多さに驚いた。

調香師の卵の弘之は、あるとき前ぶれもなく自殺を遂げるが、遺書も残されておらず、一緒に住んでいた恋人の涼子にも理由がわからない。弘之は家族はいないといっていたのに、病院には弟がすぐにかけつけ、母も存命だという。弘之が履歴書に書いたこと、涼子に話したことは嘘ばかりだった。
幼い頃から数々の数学コンクールに出場しては優勝トロフィーを持ち帰っていた数学の天才だったこと、スケートがものすごく上手だということ。いろいろなことを弘之は隠していた。
涼子は弘之の本当のことを知るために、彼の実家にしばし滞在し、彼の最後の数学コンクール参加となったプラハへと足を運ぶ。

頑ななまでに強い過去への志向。数学。強迫神経症めいた整頓へのこだわりなど。
同一の作家が書くものだから、別作品と共通する部分があってもいいとは思うものの、それが個性だとは思うものの、どうも共通しすぎているような気がしてならない。たまたまなのか。それとも、こういうものしか書けない/書きたくないのか。
本書に限っていえば、涼子の様々な探索にもかかわらず、結局弘之がなぜ死んだのかは明らかにされていないし、弘之の過去の出来事をいくつか取り出して見せて、さあこういう過去を持つ人物なのだから、自殺するのは当然でしょうと暗に示されているのだとしても納得がいかない。
確かに人は常に周囲を納得させられるだけの理由をもって死ぬわけじゃない。だけど、本書のこれは少し不親切だ。
小川洋子の本を読んだときにはもやもや感がつきものなのだと、そろそろ認めるべきだろうか。
ついでに一言いうならば、この作者の書く女性主人公というのはいつも微妙に粘着質で、好感が持てない。少しだけつきあう分には問題ないだろうけど、長く親しくつきあおうとすると、妙なところで辟易とさせられそうな気がする。そんなことを思うのはわたしだけですか。
[PR]
by agco | 2005-05-27 19:29 | FT・ホラー・幻想
<< 「ムーンフラッシュ」「ムーンド... 「意識とはなにか ―<私>を生... >>



あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
by agco
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31