「アバラット 1、2」 クライヴ・パーカー

ホラー作家として有名なクライヴ・パーカーの本を読むのは実はこれが初めてなので、色々読み方を間違えているかもしれないと思いつつ、また、市場では児童文学という扱いであるけども、別段子供向けではないだろうということで、あえて「FT」の項目に分類させていただいた。

養鶏場以外にはとりたてて見るところのない、ミネソタの片田舎チキンタウンに住むキャンディ・カッケンブッシュは15歳で、折り合いの悪い父と退屈な街と教師の嫌がらせにほとほと愛想が尽きていた。そんなとき、キャンディは不思議な事件に巻き込まれる。町外れの草むらの中で出会った奇妙な男に、朽ち果てかけた灯台へ火を入れることを依頼され、恐ろしい追跡者に命を狙われながら依頼を果たすと、なんと草むらのむこうから海が押し寄せ、キャンディを別世界へと連れ去ったのだ。
そうして彼女がやってきたのは<アバラット>と呼ばれる世界。24時の一時間ごとにひとつ島が存在し、真夜中の島は常に真夜中、真昼の島は常に真昼。時間を言うことがそのまま場所をいうことになる。そして時間の外にある25時の島を加えて世界は全部で25個の島から成り立っている。
キャンディは多くの仲間や助力を得、様々な困難を乗り越えながら島々を渡り冒険をする。しかしそれは必ずしも望んでのことではなかった。真夜中の王、クリストファー・キャリオンが、なぜかキャンディを付け狙い、自らのもとへと招き寄せようと、恐ろしい追っ手を差し向けていたからだ。
はじめて訪れたはずのアバラットという別世界に、キャンディは驚くべき早さで順応し、知らないはずの魔法の呪文を思い出したり、不思議な懐かしさを感じたりする。自分は一体何者なのか。キャンディの旅は自然とそれを追い求める旅となる。

悪役の親玉といったところのクリストファー・キャリオンは、外見的にも非常に凝った造詣であるが、その内面たるや意外に愛らしく、キャンディを追い求めるのも殺すためではなく半ば恋愛感情にも似た不思議な欲求に背中を押されてのことであるし、過去には真剣な恋をして、それは真摯にいじましいくらいの態度で相手をくどいたのにあっさり振られ、そして祖母のメイター・モトリーとの間には、深い確執が存在する。
陰影の深いキャラクターであり、彼が二巻で(ネタバレにつき省略)であるのは非常に残念だ。
キャンディはへこたれることを知らないパワフルな少女で、彼女が自らの未来を次々と切り開いていく様は清々しい。嫌味のないヒロインである。

本書には一冊の中に百点を越える色鮮やかなイラストレーションが織り込まれているのだが、それは作者自らの手になるもので、実をいうと物語よりも先にまず絵が存在し、それらを眺めているうちに、いつのまにか物語が形を得てしまったのだそうだ。
実に納得のいくエピソードである。本書に登場するキャラクターや島々をはじめとする様々なものたちの造詣は、非常に視覚的であり、また個性に満ち溢れている。毒々しくも鮮烈に命を得ている。
ここまですごい絵が描けるなら、クライヴ・パーカーは絵描きになっても良かったんじゃないかというほどの、これは立派な才能だと思う。
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by agco | 2005-02-13 23:55 | FT・ホラー・幻想
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