「ケスリス」「ションジル」「クタス」 C. J. チェリイ

ここに三つの種族がある。ひとつは人類。そしてもうひとつは商業上の理由で人類と敵対するに至ったレグルと呼ばれる種族。そして第三は、レグルに傭兵として雇われている戦闘部族ムリ。
人類とレグルとの間に起こった戦争で、実際に戦い命を散らしたのはムリだった。四十年を越える戦闘の果て、レグルが譲歩する形で事態が収束したときにはムリは種族の非戦闘員までを合わせても五百人強という人数に減っていた。
レグルは人類に、ムリの故郷の惑星ケスリスを譲り渡すという約定を与えたが、それはレグルとムリとの間の長年の契約を破るものだった。レグルはそのことによる報復を恐れ、また同時に人類がムリと新たな契約を結ぶことを恐れ、自らの手でムリを滅ぼそうとした。レグルの卑劣な爆撃から偶然にも生き残ったのは、一族の導き手たる<シーパン>のメレイン、戦士<ケル>のニウンの若きふたりだけだった。彼らは一族の聖地に隠された聖体を手に入れるための過酷な旅へ、人間の軍人であるダンカンを同行させる。それは行きがかり上仕方のない、強制的なものだったが、その数日の間にダンカンとニウンの間には互いを認める気持ちと友情めいたものが生まれる。そしてその気持ちとムリという滅びつつある種族への同情心のため、いつしかダンカンは人類よりも深くムリへと心を寄せるようになり、ついにはその身を投げ打って、知られざるムリの本当の故郷の惑星「クタス」へとふたりを導くことになる。

決して平坦ではない道を、自らのすべてを差し出すことでダンカンは選び取り、種族の違いを乗り越え理解と尊敬と愛情を勝ち取ったのである。
物語はクタスへとたどりついたところでは終わらず、そこで彼らが出会った出来事、人類とレグルとムリという三者それぞれの思惑のぶつかり合いと、最終的には幸福な結末とが描かれている。
生き残りのムリのふたりだけでは決して成し遂げられなかったことが、ダンカンという異種族のひとりの身を犠牲にした献身により、すべての様相を変えた。その痛ましいまでの努力と誠実さ、心の強さには感嘆せざるを得ない。それもこれも、ダンカンとニウンの間に生じた深い絆ゆえのことなのだと思うとなかなか感慨深い。

というかぶっちゃけ、異種族交流友情ものにはわたしは弱いのである。アシモフのロボットシリーズといい、神林長平の「戦闘妖精雪風」といい、ル=グィンの「闇の左手」だって、考えてみればみんなそのタイプの話だ。相容れない異種族間に、通常ではありえない強い何かが生じること。そこには乙女心を激震させる、奥深いドラマがあるのだ。(乙女?)
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by agco | 2005-02-06 00:13 | SF
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