「ロボットの魂」 バリントン・J・ベイリー

子供のいない老夫婦が、せめてもの代わりになってくれればと、願いをこめて作り出したロボット、ジャスペロダスは、目覚めた瞬間に老夫婦の願いを鼻で笑ってダッシュで逃亡。ロボット三原則なんていうものとは無縁な彼(仮にここでは彼と呼ぼう。外見的には金属で出来た男性型ヒューマノイド)は、偶然列車強盗の場に遭遇し、自分をマシンガンで撃ってくる男を鬱陶しいからという理由で殺害。盗賊団の首領にすっかり仲間扱いされ、女たちが強姦されるのを目の前にしても、自分にはそういう衝動ばかりは理解できないなあとひとり思索にふける。

ロボットは人間の命令に従うものだと思い込んでいる周囲をよそに、ジャスペロダスは誰の命令にも従わない。むしろ彼を自由に操ろうとする周囲に反抗し、盗賊団のアジトもさっさと離れ、とある王国で捕獲され、持ち主のいない野良ロボットとして王に献上されたときには、はじめは忍耐強く従順に仕え、しかしながらその後は革命をもって王位を簒奪するという大暴れぶり。

しかし彼は必ずしも権力を望んでいたのではなかったのだ。彼が真に求めていたのは、周囲に対等の人間と同様に受け入れられることであり、またロボットである彼には意識、あるいは魂とも言い換えるべきものが存在するのかどうかを知ることだったのだ。
ジャスペロダスは自らには意識が存在すると感じていたが、人間たちや、特にロボット工学を専門とするロボット師たち、あるいは哲学者たちは、こぞってその感覚を否定する。
意識、また魂は、人間などの自然の創造物にのみ宿るものであり、被創造物であるロボットには絶対に存在しないというのだ。
ジャスペロダスは苦悩する。苦悩の果てに、ついに彼は、そもそも彼を生み出した老夫婦のもとにまで、真相を問いただすために帰ることになるが…。

結構、彼がたどりついた結論は、そんなのありかというようなものだったりするのだが、それはさておきロボットのジャスペロダスが、その明晰な頭脳と強靭なボディひとつを武器に、王宮でのし上がっていく様はわくわくするし、面白い。最初に老夫婦の下を飛び出した時には人の心をわからないかなりひどい奴だったのだが、その後の彼の行動を見る限り、相当に人道的であるし、あらゆる面で、まったくもって人間的だ。特に親友と呼んでしかるべき立場だったインウィング(人間)との交流や、その死に際しての嘆きぶりなどは切ない。いっそのこともっと非人間的にひどい奴でも良かった気のするほどだ。

自分に魂が存在するのか否かと真剣に思い悩むジャスペロダスは、普通の人間たちよりはるかに人間らしかった。
ジャスペロダスよ、デカルトを読め! とは、本書の解説にある黒崎氏の言葉だが、思わず拍手をもって讃えたいほど大賛成である。
ああ、でもやっぱり、オチはああじゃないほうが個人的には良かったなあ…。結局あれは、ロボットに魂は××(一応伏せておく)ということになるんですかね?

ロボットの魂」 バリントン・J・ベイリー
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by agco | 2004-12-04 17:01 | SF
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あまりに自分の忘却力がすごすぎるので、面白かったものも面白くなかったものも、とりあえず読んだ本の感想を全部記録してみることにしました。コメントなどありましたらご自由にどうぞ。
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